当ブログはJ-WAVEの「GROOVE LINE」内でピストン西沢氏にごく一瞬紹介されました。まぁ素敵。


by travelers-high
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二月の夢(5)

不幸が似合いそうな女

実際に不幸であるかどうかは問題ではない、問題は似合うかどうかなのである、他の言葉でこの感覚に近いのは、逆境に耐えられる女、けして逆境に強いのではない、どちらかといえば逆境がもたらす痛みに強いのである。
俺は女が座ると同時に席を立ち一旦便所に移動した、理由はこうである。えーと、女女女、女だ、若いぞ、若い女の感じがするぞ、ヤバいな、一人だ、カウンターに座るぞ、こりゃ、困ったな、えーと、何話そう、何も話さないわけにもいかないからな、えーと、とりあえずつけてる時計とかピアスとかをテキトーに誉めてみるか、女はそういうの好きだもんな、なんとなく、これだな、なんとなく話しかけてみよう、あー、だ、でもどうしよう、アマゾネスだったらどうしよう、電波が来てたらどうしよう、サルに似てたらどうしよう、ダミ声だったらどうしよう、何話せばいいんだろ、・・・、ま、いいか、とにかくどんな女か確認しなきゃ始まらねえ、よし、よし、仲良くなるぞ、きっと仲良くなるぞ。
対人恐怖気味の人間が女好きだとこういった思考になるのである、自分を鼓舞しなければなかなか女に話しかけられないのである、しかし女好きの衝動が話しかけられずにはいられないのだ、つくづく厄介な性格だと思う。
本当に小便をして手を洗うと、島唄ライブを告知するフライヤーやら民謡酒場のチラシやらがベタベタと貼られたトイレのドアを慎重にがちゃりと開ける、開ければカウンターは正面だ、このやろう、どんな女だ、でーい。
女は俺の座るカウンター席から一つ空けた奥の席に小さい尻をチョコンと乗せて、肩まであるストレートの黒い髪をカウンターに垂らしながら食い入るようにメニューを見ていた、そして、ふ、と顔を上げると、小さな唇がこう言った、「菊乃露、12年のやつ」、梅の香りがしそうな声だった。そして不幸が似合いそうな女だなと思った。
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by travelers-high | 2006-02-16 21:30 | 幻想絵巻