当ブログはJ-WAVEの「GROOVE LINE」内でピストン西沢氏にごく一瞬紹介されました。まぁ素敵。


by travelers-high
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地下鉄東部五十嵐線(2)

ホームからホームを結ぶ中二階のような通路を限界ギリギリの前傾姿勢で全力疾走しながら、脳ミソの北極のような部分が彼女と過ごした甘い火薬のような時間をフラッシュバックさせる。

ハーゲンダッツを食うあの子。
マルガリータを飲むあの子。
手羽先を食いちぎるあの子。
牛乳を飲むときに手を腰に当てるあの子。
鉄板でカルビを焼くあの子。
炭火で野菜を焼くあの子。
結局あの女は食ってばっかりじゃねえか、こんちきしょぉぉぉぉぉ。
息が切れる、視界がゆがむ、足がつんのめる。必死な自分に笑いがこみ上げる。

突き当りから左に通路は折れ、反対側のホームへ降りる階段が現れた。確実に、彼女との距離が縮む、縮んでいる。もっと、縮め、縮め。体をひねってほとんど横滑りになって無理矢理進行方向をねじ曲げながら、それでも下り階段へ足を一歩前に投げ出す。
階段の下から30代とおぼしきOL風の女性が登ってきたが、突然現れた血相を変えて激しく動く俺との遭遇にどうやら心底仰天、ひっ、反射的に鋭く息を吸い込みやがった、おびえる女はセクシーだ。はは、ツいてるねアナタ、こんな切羽詰った人間を今日の終わりに見れて、明日会社で皆に話すが良いさ。あははははは。
ホームへの階段を半分転げるように駆け下りると、銀色に光る終電が目の前に現れた、が。

にゅいーんギシッ。

自分のチャレンジが失敗に終わった事を告げる、地下鉄が発車する特有のレールがきしむ音が鼓膜に響いた。巨大な電気仕掛けの車両がゆっくりと動き出していた。
一瞬で下半身から芯が抜ける、それ以上直立の姿勢を保つ力はもう、体中のどこにも残っちゃいなかった。世界のどこかで村がひとつ、腐海に沈む。

天空の火花よ、兄弟よ。
体の一部が恥部じゃない。
私は全部、恥部なのだ。

ベートーヴェンとクロマニヨンズのヒロトが、同時に脳の北極で陽気な絶望を叫んだ。
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by travelers-high | 2007-09-28 21:27 | 幻想絵巻