当ブログはJ-WAVEの「GROOVE LINE」内でピストン西沢氏にごく一瞬紹介されました。まぁ素敵。


by travelers-high
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カテゴリ:幻想絵巻( 63 )

ハラヘッタ

かあちゃんギョーザが食いたい
かあちゃんトンカツ食いたい

腹へった
今日すんごく腹へった

下っ腹がずどーんて無くなるみたいに腹へった。

お風呂に入ったらごはんだよね
おいしくつくれよ おかあちゃん
僕はお腹がへってんだ
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by travelers-high | 2007-12-08 21:02 | 幻想絵巻

島へ(9)

ぎっこんばったん、そんな表現でいいのだろうか。
とにかく近くに行けば行くほどその揺れが恐ろしく激しいものだとわかる。俺は最悪の事態を覚悟した。こんな時は最も悪い事を想定するのである、そうすればあらゆる場面に臆す事無く対応出来ようというものだ。
この場合のサイアクとは、露出壁のある熟年夫婦が夫の仕事場で夕日を尻目に熱いファイトをしているであるとか、世の中に深い憎しみをたぎらせた若者がタクシー強盗をはたらいて運転手と激しいファイトをしているとか、何かきっとあのタクシーの中で想像を絶するとてつもなく奇天烈なファイトが繰り広げられているに違いないということだ。
そして俺は、その状況を何とかした上で、「街までつれてってください」と運転手にアバウトな依頼をしなければならない。路線バスはこの時間で既に閉店、このタクシーを逃せばあとはヒッチハイクくらいしか移動する手段が無くなる、どうしてもこのタクシーで街まで行かなければならないのだ。何が最悪かといえば、この俺のおかれた状況が既に最悪なのである。
飛行機の上で気絶して、目が覚めたら恩人を名乗る女がいて、そしてポルター・ガイストのように不吉な動きをするタクシー。何で来たのかな、この島に。

あ、腹筋運動だ。

ひと目見て理解した。二車線の車道を横切る形で後ろから前傾姿勢でタクシーに接近したのだが、リアガラスに激しく動く頭が透けていた。禿げ上がった頭がバネ仕掛けのように、びゅんっびゅんっ、と動いている、どうやら運転手らしき男性が後部座席に横になった体勢で腹筋に凶暴な負荷をかけているところだったようだ。

俺は何食わぬ顔で道路を引き返すと、みゆきの耳に口を寄せ、
「すっごいことしてた。」
とだけ伝えた。
みゆきの目が一瞬鈍く光ったような気がした。
その小柄な女は先ほどの自分と同じように前傾姿勢になり、道路を横切って後から揺れるタクシーに近づくと、そのまま歩道側から後部座席を覗き込んだ。

あははははははははは!!

澄み切った笑い声が島の夕焼けに溶けたとさ。
(プロローグ・完)
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by travelers-high | 2007-12-06 20:01 | 幻想絵巻

島へ(8)

ふと立ち止まったみゆきは、じっとその緑色のタクシーを見つめつぶやいた。
「あのタクシー・・・。」
そう言われてよく見ると、夕日を正面から受けて緑色の車体をギラギラと反射させるそのタクシーは、揺れていた。
そう、ユサユサと揺れているのである。
中にいる何者かが激しい運動しているのだろう。
俺は前を向いて黙っていた。みゆきも前を向いて黙っていた。
夕日に照らされ茜色に染まった揺れるタクシーを二人無言で眺めた。

みゆきは右手を「敬礼」の状態にして影を作り、顔面から西日のまぶしさを散らしながらこちらを向くと、そのフルーティーな顔をスパイシーにゆがめ言った。
「なんか嫌~な予感しない?」
みゆきは小柄な女だ。後頭部に張り付くようなヘンプのニットキャップをかぶった頭がちょうど俺のあごの辺りにある。
俺の身長は松竹梅で言えば竹、酒で言えば発泡酒位の高さなので、その俺のあごなら150cmくらいだろうか。
グレープフルーツのような丸顔には、日本人離れした、というかどっかから輸入した?くらいの大きな目がついている。首筋が小麦色に焼け、ひきしまった全身はどこかマラソンのランナーを連想させた。
「うん・・・、すご~く嫌な予感がする。」
「行きなさいよ・・・、男の子でしょ。」
「揺れるタクシーの秘密なんて、世界で一番解きたくない謎だよ。」
俺はとぼとぼとタクシーに向かって歩き出した。
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by travelers-high | 2007-12-03 22:45 | 幻想絵巻

島へ(6)

「ああ、は、まぁ、晩飯。そっすね、いいですけど、恩人・・・さんですしね。にゃ・・・、その・・・、あ・・・・、あ、俺、むろです。名前、大垣 室。おおがきしつと書いて、おおがきむろです。」
「知ってる、さっき免許見た。引取りの書類作るとき。」
「め・・・、ま、仕方ないか・・・。まー、じゃ、自己紹介も終わったとこでメシ行きますか。」

俺はまだ少しフラつく頭を右手で支えながら立ち上がった。コンクリの冷たい床をベッドにしていたので体中の関節がギシギシときしむ。

飛行場と呼ぶにはあまりに簡単な建物から出ると、夏の初めに吹く生ぬるい夕暮れの風が二人の間を通り抜けた。
「で、末森さん。助けてくれたみたいで、どーも、アリガトーゴザイマス。」
俺は深々と頭を下げた。
「みゆきでいいよ。」
それだけ言うと、みゆきはひひひと笑った。

道路は空港の施設から駐車場を隔てて走っている。駐車場というか、耕作放棄地というか、とにかく手入れのされていない公民館の広場のような駐車スペースを二人並んで歩いた。俺はバックパック一つだが、みゆきも小さな肩掛けのスポーツバッグひとつという軽装である。身軽なもんだ。
止っている車は数えるほどで、戦前に製作されたような朽ち果てた看板が広場の隅に突き刺さっていた。剥げたペンキのそれを良く見ると、ようこそ金華島へ、と書いてあるようだ。
きんかじま、母の故郷である。
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by travelers-high | 2007-11-28 21:37 | 幻想絵巻

島へ(5)

女はコーラの缶を横に振って空になったのを確認すると、何かに納得したような顔をしておもむろにベンチから腰を上げ、待合室の角に向けてすたすたと歩き始めた。彼女の先には角と赤い自販機、そしてゴミ箱がある、たぶん手に持った空き缶を捨てるのだろう。
ベンチとゴミ箱の中間まで進んだ彼女はふと足を止め、こちらに首だけ向けて、
「あ、私、ミユキ。末森美幸。あんたの保護者。」

自己紹介は有難かったが、最後の言葉が気になった。
「保護者・・・?」

「そう、保護者。」

ミユキはゴミ箱に視線を戻すと、空き缶を目の高さまで持ち上げてから手を離し、垂直に落下してきたところでジーンズをはいた右足を勢い良く振り抜いた。アディダスの茶色いスニーカーに蹴り上げられたアルミ缶は見事な放物線を描いて宙を舞ったが、ターゲットのゴミ箱を少し外れて自販機を直撃してから跳ね返り、床に転がって軽い金属音を立てた。

からん。

ちっ、ミユキは露骨に舌打ちをすると、蹴り跡がへこんだ空き缶をよっこいしょと拾い直してゴミ箱に捨てた。そしてこちらに向き直り、
「あんた飛行機で失神したでしょ。あの後あんたを介抱して、着陸したら飛行機から降ろして、んでここの床までえっさっほいさと運んできたすごく親切な人は、さて誰でしょう?」
と、実に楽しそうに言うのだった。

「み、美幸さんですか?」
そう答えるしか無かった。

ミユキはニヤリと笑うと、
「ブー、それをやったのは全部スッチーと空港の職員。私は見てただけだよ。ただ、一応保護者ってことにして、あんたの身柄を引き取ったのは私。ここの人もあんたを持て余してたみたいだからなんだか感謝されちゃった。」
と、ここまでの顛末を物語るのである。
自分の今の状況が飲み込めると、どうにも情けなかった。

「ま、ひとまず恩人に感謝の気持ちを表して、晩飯くらいご馳走してくれてもいいんじゃない?」
どうやらこの女は最初からそのつもりだったらしい。
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by travelers-high | 2007-11-19 21:04 | 幻想絵巻

島へ(4)

「背中いてえよ・・・。」私は腰をさすりながら答えた。

「そう・・・。」
彼女はコカコーラのロゴが入ったベンチに腰をかけ、コカコーラのロゴ入りのTシャツを着て、コカコーラのロング缶を手に持っていた。コーラの妖精か、こいつは。
「あのさ・・・」
彼女の唇が動く。
「なに?」
「コーラ飲むと骨が溶けるって昔、言われなかった?」
「へ・・・?」
「だからさ、コーラを飲むと骨が溶けるって、んー、小さい頃お母さんとかに言われたりしなかった?」
「・・・。どうかな・・・、あんまり記憶に無いけど・・・。」
「そう・・・。」

二人の他には誰もいない待合室は声が妙に響く。
彼女の奇妙な質問は更に続いた。

「あ・・・。でもTVからは放射能が出てるって言われたでしょ?」
「あの・・・、いや・・・、どうかな・・・、それも・・・。でも出ないでしょ。放射能とかそういうの。」
「出ないよね、普通、原発じゃあるまいし。」
あるまいしと言ったところで、このコーラの精は右手に持った赤い缶を口元に持っていくと、そのまま顔を上げて、丁度天井を見上げるようにぐいぐいと喉を動かしながら骨が溶けるという液体を飲み干した。

「溶ける訳無いよね、こんなにおいしいのに。」
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by travelers-high | 2007-11-16 21:45 | 幻想絵巻

島へ(3)

地球の自転と月の公転が複雑に脳味噌をシェイクしているようなめまいが私を襲っていたので、とりあえずこの新キャラに助けを求めてみようと心に決め、アフター卒倒、初めて能動的にアクションを起こすことにした。言葉を吐くのが先か、昼飯のちゃんぽんを吐くのが先かという切羽詰った状況だったが、辛うじて言葉が先に出た。
自分の症状をなるべく端的に、そして極力素直に表す母国語を、糠床からキュウリを掴み取るように、小学校の掃除の時間で濡れ雑巾をバケツの上でしぼるように発声。

「き・・・、きぼちわるいのです。」

その「き・・・。きぼちわるいのです。」とは、もちろん気持ちが悪いということを表現したかったのだが、その「きぼちわるいのです。」の「す。」を言い終えた瞬間、音が全て消えた。ターボプロップのエンジンが引き起こす爆音も、ジェット気流が主翼をねじるきしみも全て消え、一拍のパーフェクトな静寂が雲の上に舞い降りた。神に相当する何者かが、自宅にあるフローリングの居間でソファに寝そべりながら、休日の退屈しのぎにこの世界のミュートボタンを押したのかもしれない。
少なくとも私には、刹那と永遠が同居したように感じた、時間が止まった。
奇跡だった。アフガン産の混ぜ物が見せた夢の真髄だ。

「あははははは!!いい声で鳴くね~!!」

止まった時計の針を動かしたのは、看護学校中退の女が高らかに上げたキンモクセイの香りがするサディスティックな笑い声だった。巨大な炭酸の泡が弾けたような爽快な声だった。
私が死ぬ思いで吐いた言葉を、偉大な歴史に対して垂直に進む詩の様な時間で咀嚼し、満足したところで一気に笑い上げるとは、お見事。

感心しすぎて意識を失った私はその後しばらくの記憶が無い。目が覚めると空港の小さな待合室で、コンクリートの床に直で寝かされていた、そして腹の上には行きの空港で預けた手荷物の小さなバックパックが置いてあるのだった。

背中痛ってぇぇ~。いくらなんでもコンクリの床に直に寝かすこたねえだろうに。
グリスが切れて、尚且つ大事な部品が脱落した工作機械よろしくギシギシと半身を起こす。
左手にはめたGショックは持ち主の一大事を気にしていた様子も無く、この国の標準時を無表情に表示していた。小さなバックパックのさらに小さなポケットからタバコとライターを取り出し火をつけると、軽いタバコの薄い煙が宙に舞う。
もう夕方か。七月の湿度がこもる空気に少しだけ夜の気配が感じられた。

「少しは楽になった?」

殺風景で薄暗い昭和の雰囲気を残す空港の待合室で、私から少し離れたところにある背もたれが一部欠損したプラスティック製の赤いベンチに座っていたのは、その女だった。
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by travelers-high | 2007-11-15 21:58 | 幻想絵巻

島へ(2)

頼むから少しほっといてくれんもんかな。

うつぶせの状態でブッ倒れている私は、血の気の引いた頭を持て余しながら、目を閉じて出来るだけ時間が早く過ぎることを祈った。吐きたい、切に吐きたい、喉に詰まったピンポン玉が食道を行ったり来たりしているのがわかる。私は悪酔いの極北でこの世の不幸を一手に引き受けて寝転がっているのだ、上空一万メートルで救いも何もあるものか、出来ればこのまま飛行機を降ろしてくれないかな、パラシュートの無いスカイダイビングを楽しんで、そのまま魚のエサになるのも悪くない、そんな気がした、気がしたのに、なぜか不意に花の香りがするのだ。

あんた、大丈夫?

女の声だった。

お医者様ですか?中年スッチーが助かったと言わんばかりに聞いている。
あはは、お医者様?そんなもんじゃないです、看護学校中退です。竹を割ったような微妙な回答が、プロペラ機の振動に混じって私の耳に入った。
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by travelers-high | 2007-11-09 20:52 | 幻想絵巻

島へ(1)

お客様の中にぃぃぃ!!
お医者さまはぁぁぁ!!
いらっしゃいませんかぁぁぁぁ!!

中年の客室乗務員が発する野太い絶叫が、国産プロペラ機による頼りない爆音を切り裂くかのように、狭い機内の中を貫いた。
彼女の言う「お客様」の数はそれ程多いわけではない、この飛行機は南国の地方都市から離島へ人と荷物を運ぶ為に細々と運行されている貧乏路線、乗客の中心は当然島民である。島には診療所と歯医者が一軒づつあるだけなので、この機内にいわゆる「お医者さま」が乗っている可能性はほぼ、ゼロと言っていいのだろう。
この中年の客室乗務員もそんな事情はわかっているはずなのだが、応援団のような声でここにいるはずもない医者を呼んだのは、きっといつかは言ってみたいセリフだったからなのではないのだろうか。

ちなみに上空1万メートルで青い顔をしてブッ倒れたのはこの私である。チェックイン直前に見送りの仲間から景気づけにとアフガン産の混ぜ物が入ったテキーラを飲まされ、離陸直前にその混ぜ物が効き始め、1万メートル直前でそいつがスパークしたという経緯だ。飛行機は空高く飛んだが、自分は精神的な古傷から再び血飛沫が上がったという笑えない状況なのである。

言うなれば単なるバッドトリップだが、その辺りの事情を知らない人から見れば、不意に便所に立ち上がった人がいきなり卒倒したように映っているのだろう。客観的にはいわゆる急患だ、大変な事態、島へ行く飛行機では初めてのトラブルなのではないだろうか。
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by travelers-high | 2007-11-08 20:27 | 幻想絵巻
ホームからホームを結ぶ中二階のような通路を限界ギリギリの前傾姿勢で全力疾走しながら、脳ミソの北極のような部分が彼女と過ごした甘い火薬のような時間をフラッシュバックさせる。

ハーゲンダッツを食うあの子。
マルガリータを飲むあの子。
手羽先を食いちぎるあの子。
牛乳を飲むときに手を腰に当てるあの子。
鉄板でカルビを焼くあの子。
炭火で野菜を焼くあの子。
結局あの女は食ってばっかりじゃねえか、こんちきしょぉぉぉぉぉ。
息が切れる、視界がゆがむ、足がつんのめる。必死な自分に笑いがこみ上げる。

突き当りから左に通路は折れ、反対側のホームへ降りる階段が現れた。確実に、彼女との距離が縮む、縮んでいる。もっと、縮め、縮め。体をひねってほとんど横滑りになって無理矢理進行方向をねじ曲げながら、それでも下り階段へ足を一歩前に投げ出す。
階段の下から30代とおぼしきOL風の女性が登ってきたが、突然現れた血相を変えて激しく動く俺との遭遇にどうやら心底仰天、ひっ、反射的に鋭く息を吸い込みやがった、おびえる女はセクシーだ。はは、ツいてるねアナタ、こんな切羽詰った人間を今日の終わりに見れて、明日会社で皆に話すが良いさ。あははははは。
ホームへの階段を半分転げるように駆け下りると、銀色に光る終電が目の前に現れた、が。

にゅいーんギシッ。

自分のチャレンジが失敗に終わった事を告げる、地下鉄が発車する特有のレールがきしむ音が鼓膜に響いた。巨大な電気仕掛けの車両がゆっくりと動き出していた。
一瞬で下半身から芯が抜ける、それ以上直立の姿勢を保つ力はもう、体中のどこにも残っちゃいなかった。世界のどこかで村がひとつ、腐海に沈む。

天空の火花よ、兄弟よ。
体の一部が恥部じゃない。
私は全部、恥部なのだ。

ベートーヴェンとクロマニヨンズのヒロトが、同時に脳の北極で陽気な絶望を叫んだ。
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by travelers-high | 2007-09-28 21:27 | 幻想絵巻