げへへへへ。
今日は怖いよ。
それを見たのは私がまだ少年だった頃の話、暑い夏がようやく去る気配を見せはじめた八月のおわりのことだった。
西の山に日は落ち、生ぬるい風が家の周りを鮮度の悪いイカのようにぐんにゃりと流れていた。当時の我が家は二階建てで、そこそこの部屋数があり、夜になると窓の数だけカーテンを閉めて回る必要があった。男も家事をこなすのが家風の我が家は、各々がそれぞれの役割を持ち、暗黙のルールにしたがって仕事をこなしていたのだが、カーテン閉めは末っ子の私に与えられた家事のひとつだった。
一階のカーテンを全て閉めてから二階にとりかかるのが常であったので、その日もその私的なマニュアルに従い、まずは一階の窓からバタバタと仕事にかかった。
一階のカーテンを全て閉め、階段を駆け上がって二階に着手、そーれ、まずは俺の部屋からカーテンを閉めてやるぜい。
自宅が中学校の側だったので、東側にある私の部屋は校庭を見下ろす位置にある。私は勢い良く部屋のドアをあけて学校が見える東側の窓の前に立った、部屋はもう暗かった。
窓から見える外は黒と紫の絵の具を練ったような色で塗りつぶされ、見慣れた風景もねっとりと嫌味なテイストで味付けされていた。私は窓越しに闇を覗いたが、闇は外から私を見つめ返し、ぬるぬると窓を通り抜けて部屋に流れ込んでいた。
早く閉めよう、カーテンは家の光を少しでも外に漏らさぬようにする道具だ、闇を家に入れないための盾なのである。
私は両腕を広げ、左右から同時にカーテンを閉めようとした、その時、
うすぼんやりとした人型の白い物体が、目の前を右から左へとゆっくり通り過ぎた。
何?何?今の何?ひひ、ひ・・と、人、と、なな、ぬ・・・。
何が起こったのか、何を見たのか、さっぱり分からなかった。ただ、私は腰が抜けてその場にへたり込んでしまった。
これは人生でも何度と無い心霊体験の話だ。
もし、私に「オバケ見たことある?」と聞いたら、三回に一回くらいはこの話をするだろう。
今日は怖いよ。
それを見たのは私がまだ少年だった頃の話、暑い夏がようやく去る気配を見せはじめた八月のおわりのことだった。
西の山に日は落ち、生ぬるい風が家の周りを鮮度の悪いイカのようにぐんにゃりと流れていた。当時の我が家は二階建てで、そこそこの部屋数があり、夜になると窓の数だけカーテンを閉めて回る必要があった。男も家事をこなすのが家風の我が家は、各々がそれぞれの役割を持ち、暗黙のルールにしたがって仕事をこなしていたのだが、カーテン閉めは末っ子の私に与えられた家事のひとつだった。
一階のカーテンを全て閉めてから二階にとりかかるのが常であったので、その日もその私的なマニュアルに従い、まずは一階の窓からバタバタと仕事にかかった。
一階のカーテンを全て閉め、階段を駆け上がって二階に着手、そーれ、まずは俺の部屋からカーテンを閉めてやるぜい。
自宅が中学校の側だったので、東側にある私の部屋は校庭を見下ろす位置にある。私は勢い良く部屋のドアをあけて学校が見える東側の窓の前に立った、部屋はもう暗かった。
窓から見える外は黒と紫の絵の具を練ったような色で塗りつぶされ、見慣れた風景もねっとりと嫌味なテイストで味付けされていた。私は窓越しに闇を覗いたが、闇は外から私を見つめ返し、ぬるぬると窓を通り抜けて部屋に流れ込んでいた。
早く閉めよう、カーテンは家の光を少しでも外に漏らさぬようにする道具だ、闇を家に入れないための盾なのである。
私は両腕を広げ、左右から同時にカーテンを閉めようとした、その時、
うすぼんやりとした人型の白い物体が、目の前を右から左へとゆっくり通り過ぎた。
何?何?今の何?ひひ、ひ・・と、人、と、なな、ぬ・・・。
何が起こったのか、何を見たのか、さっぱり分からなかった。ただ、私は腰が抜けてその場にへたり込んでしまった。
これは人生でも何度と無い心霊体験の話だ。
もし、私に「オバケ見たことある?」と聞いたら、三回に一回くらいはこの話をするだろう。
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by travelers-high
| 2008-01-09 20:25
| 幻想絵巻